男の秘密
バタン。

何かを締める音で眠りから覚めた。

ぼんやりと目を開けると、夕暮れの空が見えた。

『寝てたんだ』

車の音楽に混じって微かに話し声が聞こえてきた。

『あれ?忍さんは?』

ゆっくりと起き上がると、ガードレールに腰掛けて何かを話す忍を見つけた。

「・・撮影はや・・」

「撮影?仕事の話かしら」

何か揉めている様で、声が大きくなって優にも所々聞こえてきた。

「分かった。」

いつもの忍とは違う、苛立ったような声でそう言うと、通話を終了させた。

「! 悪い。起こした?」

車に戻る際に優が起きている事に気付き、驚いたような顔をしていた。

「いえ、私の方こそ寝てしまってすみません」

『電話の事、聞きたいけど仕事の話は何時も緩くかわすから聞かない方がいいのかしら』

運転席の忍をチラリと見てそんな事を考える。

「ご飯を食べて帰ろうか」

「はい」

そう言って、忍と一緒に食事をしたが、今日一日色々あったので、話もあまり頭に入らなかった。

『友達だったら、仕事の事話すわよね?忍さんと私の関係って、友達まで行ってないって事かしら
でも、こうやって、出かけるのって友達だからじゃないの?』

友達付き合いは羽奈としかした事が無い優には、今の忍との距離が全く分からなかった。
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