男の秘密
「いらっしゃい!」

慌てて玄関の扉を開けて、羽奈を招き入れる。

「お邪魔するわね。今日は日本酒の良いのが手に入ったから持って来たわ」

仕事モードからオフモードに切り替わった羽奈に似つかわしくない日本酒の1升ビン。

羽奈も優も無類の酒好きだ。

本来同期会でもお酒が飲みたいが、二人はザル過ぎて一度飲見始めるとセーブ出来ないので同期会では飲まない。

こうして、二人で飲む時だけ思いっきり飲める。

「わぁ!ありがとう・・・そっちは何?」

キャリーに四角箱が括り付けてある。

「これ?そろそろストックが無くなって来たんじゃないかと思って補充」

その一言で全てを理解した。

基本的に二人の飲み会は、部屋と料理を優が提供し、酒類を羽奈が調達してくる。

これは大学の時からの暗黙の了解だ。

羽奈は珍しい酒を良く知っていて、世に殆ど出回らない酒や焼酎を持参してくる。

そのどれも驚くほど美味しい。なので今回も大いに期待できる。

「何時もありがとう」

キャリーから降ろした箱を食器棚の横に置く。

その間に羽奈は勝手知ったる何やらで、グラスや小皿等をトレイに乗せてテーブルに運ぶ。

直ぐに飲み会の準備が完了した。
< 93 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop