One more kiss
そういった背景があり、そのオーディションを受けたとして、採用される確率は実は果てしなく低い。


ただの徒労に終わる可能性の方が断然高い。


それでも私は、チャンスがある限り、食らい付いて行かなければいけないのだ。


何故なら「Treasure」3月号の撮影を終えたら、それ以降の私のスケジュール帳は白紙状態だから。


ここで立ち止まっていては、瞬く間に仲間達から取り残され、私のモデル人生はあっけなく終わりを迎えるだろう。


とにかく形振りかまわず、がむしゃらに、動き回ってみるしかないのだ。


目の前にある藁には必死にすがり付いておかなければ。


本来なら、こういった苦労は新人の時に味わっておくべきだったと思う。


なまじ順風満帆なスタートを切ってしまったが故に、仕事を継続して行く事の真の意味での大変さ、怖さ、難しさを理解できていなかった。


もちろん、与えられたノルマは精一杯こなしていたつもりだ。


でも、その前段階のプロセスの重要さを分かっていなかったというか、見て見ぬふりをしていたというか…。


そうこうするうちに、最初の頃はコンスタントに仕事を取って来てくれていた事務所側は、新人の、若い子の方に力を入れるようになり、私の事はだんだんと放置するようになって行ってしまった。
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