One more kiss
「…どうしてもそういう情報っていうのは、漏れてしまうものなのね」

「やっぱり…」

「だけど、それがどうかしたの?」


社長は腕を組み、私をじっと見据えながら強い口調で語り出した。


「あなたのその声音と表情、かなり不満を持っているように感じられるけど、まず、出版社は別にオーディションなんか開催しなくても、自分達の判断で、自由に好きなように、モデルを指名する事ができるのよ?だけど今回わざわざその過程をオープンにしてくれた」


開き直っている訳ではなく、あくまでも冷静に。


「もちろん、最大の目的は新創刊の雑誌を広く世に知らしめる為の話題作りだけど、ビジネスなんだからそういったアプローチの仕方で宣伝活動を行うのは何ら罪な事ではないでしょう?」


私が口を挟む間も与えず、社長は明瞭な口調で矢継ぎ早に言葉を繰り出す。


「たとえグランプリが決まっていたからといって、採用されるのは一人だけではないし、他のモデルにだってシンデレラガールになれるチャンスはある。また、その雑誌では仕事ができなくても、別のオファーが舞い込む可能性だってゼロではない。オーディションが開催される事により、その恩恵を受けるモデルが増えるかもしれないのよ」


これは先ほど、ユミさんとサヤカさんも言っていた事だ。


やはりこの業界に身を置いている者ならば、そういう思考回路でいなければいけないのだろう。
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