One more kiss
「あ、お忙しい所すみません。私…」

『あら、麻耶ちゃん?』


彼はとても意外そうに問いかけて来た。


『どうしたの?こんな時間に』

「すみません突然。でも、何だか急にここに来たくなってしまって…」

『…とりあえず行くから、ちょっと待ってて』


マコトさんはそう言った後インターフォンを切り、すぐに玄関先まで移動して来てくれて、素早くドアを開けてくれた。


私はとてもドキリとする。


中からの蛍光灯の光と外灯による、控えめで淡い明るさの中、浮かび上がったマコトさんの姿は、いつもにも増して男前っぷりが際立っていたから。


「あらやだ。泣いた?」

「え…」


その指摘に、思わず右手を頬に当て問い返した。


「分かるんですか?」

「だって目は赤いしアイメイクは崩れちゃってるし、それに涙の跡も着いてるじゃない」


マコトさんはちょっと唇を尖らせながら続けた。


「んもー、せっかくアタシが可愛くしてあげたのに。台無しじゃないのー」

「すみません…」


そんなに大泣きした訳ではないんだけどな…。


周りの目もあったし、嗚咽をこらえ、溢れる涙を必死にハンカチで吸い取らせて、気合いで何とか涙腺の活動を止めたのだけれど。


結局無駄なあがきであったか。


「まぁ良いわ。直してあげるから、お入りなさいな」

「えっ」
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