One more kiss
少し俯かせていた顔を反射的に上げ、私はちょっと焦りながら尋ねた。


「い、良いんですか?」


自らここに来ておきながら、矛盾した言動だなと感じつつ。


「うん。お店はもう終わったし」

「でも、まだ残っている方が…」

「あの子達はいつも適当にやってるから大丈夫よ。とにかく上がって」


戸惑いながらも中に入り、玄関を施錠してさっさと歩き出したマコトさんの後を少し遅れて付いて行く。


「ちょっと待ってて」


店舗とマコトさん専用の個室とを繋ぐ通路に差し掛かった所で、彼はそう断りを入れてから左手数歩先にあるドアを開け、中に向かって声を張り上げた。


「アタシ奥にいるから。後はよろしくね」

「はい」

「分かりました」


すぐさま室内からスタッフさんの声が返って来る。


「じゃ、行きましょうか」


ドアを閉め、改めて個室に向かって歩き出したマコトさんに倣い、私も足を踏み出した。


「荷物はそこに置いて。用意が整ったらここに座って」


部屋に入るや否や、マコトさんはソファーを指差しながらそう指示を出し、鏡台前まで歩を進め、キビキビと準備を始めた。


「はい…」


私は小さく返答し、バッグを置き、ジャケットを脱いでソファーの背もたれにかけてから、言われた通りに椅子に腰かける。
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