One more kiss
「デキレースを仕掛けられるほど力のある事務所に所属できて、大々的に売り出してもらえるのも、その人の運だし、実力だと思っています」


そう。


「特別扱いなんて夢のまた夢。『この子に社運をかける』と事務所サイドに思ってもらえるような器じゃなかったって、自分は所詮そういうちっぽけな存在だったんだなって、嫌というほど再認識してしまって…」


私が嘆いていたのはそのあからさまな立ち位置の違い。


「それが悔しくて、だけどそんな事を考えてしまう自分自身が更に情けなく思えて、何だかもう、頭の中がぐちゃぐちゃで…」

「……ふ~ん」


しばし間を置いてから、マコトさんは返答した。


「ただの夢見る夢子さんって訳じゃなくて、意外と野心家だったんだ、麻耶ちゃんて」


「…軽蔑しますか?」

「何で?むしろ気に入っちゃったわ」


その言葉を裏付けるように、マコトさんはニッコリと微笑んだ。


「本音を吐き出している間に、みるみる表情が変わって行ったもの」

「え…?」

「ギリギリまで追い込まれてからようやく、戦闘態勢に切り替わって、眩いばかりに輝き出す子って、この世界にはいるのよね」


そして私の背後から脇へと移動すると、腰を屈め、顔を近付けながら呟く。


「とっても勇ましくて魅力的で、ついつい引き寄せられちゃう…」


てっきり、メイク直しをしてくれる為なのかと思いきや。
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