恋色シンフォニー

「次。あいつに、何された?」

尖った声が降ってきた。
どきっとした。

「……別に、何もされてないよ?」

「じゃあ、何で綾乃からあいつの香水の匂いがしたの」

「……ドアのところで、ぶつかって……」

「抱き締められた?」

「そんなことされてない」

何でこんな風に責められなきゃならないの。

私、三神くんと早瀬さんとのこと、問い詰めたりしてないじゃない。

ああ、だめだ。
頭も身体も疲れてるし、暑いし、正常な判断力が奪われているのがわかる。
こういう状態で喧嘩すると、ろくなことにならない。

「ごめん、ちょっと疲れてるから、また今度にしよう?」

気力を振り絞って、大人の対応をする。
それなのに。

「綾乃、今日ちょっとおかしいよ」

当たり前じゃない。

彼氏が素敵な女性と仲良く話しているのを機嫌よく受け入れられるほど、人間できてない。

その上、ブラ1聴いたし。

ああ、だめだ。
思考がまともにできない。

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