恋色シンフォニー
「何かあった? 言えないようなこと?」
「別に何もないってば」
頭がじんじんする。
「何か言いたいことがあるんなら言って。言葉じゃなきゃ伝わらないこと、あるよ」
もう勘弁して。
お説教を大人しくきけるほど余裕がない。
こんな風に追い詰められると。
絶対言ってはならないことを口にしてしまうよ。
「きいてる?」
イラっとした三神くんの声。
「ねえ」
泣きたくなる。
「さっきから僕の顔見ないけど、なんで、」
もうだめだ。限界。
この場を早く終わりにしたい。
「……私なんか、三神くんの彼女でいる資格ないから」
ジーという音が、
私の頭の中の音なのか、
外のセミの声なのか、
家電の音なのか、
よくわからない。
「……それって、どういう……」
「ごめん、帰って」
私がドアを開けると、三神くんは何も言わずに外に出て行った。
最後まで顔を見られなかった。