恋色シンフォニー
♪

卒業記念演奏会。
本番前、指揮者が言った。

「さみしく終わるより、これから先の人生に期待し、希望に満ちたものにしよう」

これから先の人生。

真っ先に頭に浮かんだのは、『運命』を聴いていた彼女。
彼女と関われるなら、サラリーマン人生も楽しみだ、と思った。

だから、卒演のチャイコは、初めて彼女を想って弾いた曲。

♪

入社後、同期はみんなバラバラに店舗に配属されたので、彼女との接点は、ほぼゼロ。
彼女はとんでもなく化粧品販売がうまい新入社員として噂になった。
そして、入社後1年で本部、しかも花形の商品部に上がる、という異例の出世をした。

僕は、彼女に遅れること1年、同じフロアで働けることになった。
だけど、その時には既に彼女には恋人がいて。
僕も次期コンマスとして、勉強のためにいろんなオケでエキストラしてたので忙しくて。

遠くから見ていることにしよう、と思った。
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