恋色シンフォニー
12

本番当日。
以前の私なら、能天気に楽しみにしていただろうけど。
彼氏がソリストやるなんて、こちらも緊張する。
失敗しないだろうとは思うけど。
信じてるけど。

「綾乃ちゃん、元気ないけど、緊張してる?」
設楽さんが隣でニヤっとした。
ただいま、開場待ちの列に並んでいる最中。
「もちろんです……。設楽さんはどうなんですか。弟子がソリストやるお気持ちは?」
「小さい頃からコンクールや発表会なんかで何度も経験してるけど……」
晴れ渡った秋の空を見上げる設楽さん。
「自分が弾く緊張の方がどれだけマシか……と何度思ったことか」
大きなため息をついた。
やっぱり、圭太郎のこと可愛がってるよね、設楽さん。
「あーあ、こんなに並んでいただき、どうしようねぇ」
後ろを振り返ると、行列が長く伸びていて、ギョッとした。
うう……胃がぐるぐるする……。

< 184 / 227 >

この作品をシェア

pagetop