恋色シンフォニー
ソロが戻ってきた。
ソロとオケの息が合っていて、安心して聴ける。いつも一緒に練習してきた効果なんだろうな。
ちゃんと、“協奏”してる。
……とはいえ。
……だめだ、どうしても、圭太郎が“僕だけを見て”といってるみたいだ。
私は抵抗をあきらめ、圭太郎のヴァイオリンに身を委ねることにした。
……ベッドでそうするように。
圭太郎は、
絶妙なビブラートをきかせた音色で包みこみ、
情熱的なフレーズで愛を語り、
技巧的なパッセージで翻弄する。
カデンツァ。
ソロヴァイオリンの音だけが、ホールに響き渡る。
……こんなに官能的なメンコンのカデンツァ、初めて聴いた……。
再現部からコーダへ。
圭太郎はオケを従え、私を高みへと導いていく。
それは、至福としか言いようがなくて。
あまりに幸せで、涙がこぼれ落ちる。
……もう、降参。