恋色シンフォニー
一瞬の空白の後、
割れるような拍手と、
あちこちから「ブラボー」の声。
圭太郎は、晴れやかな笑顔で客席にお辞儀をして、早瀬さんとがっしり握手。コンミスとも握手。
オケのみんなにも頭を下げる。
私はびっしょり濡れたハンカチを膝に置き、拍手を送る。
すごかったよ。
今まで聴いた中で、最高のメンコンだった。
一生忘れない。
あれ、設楽さんは動きがないけどどうしたんだろう、と思って隣を見ると。
目を手で覆っている。
……うそ、泣いてる?
設楽さんが私の視線に気づき、こちらを向き、真っ赤な目をして苦笑いした。
「やられた」
それだけ言って、拍手をする。
これは是非圭太郎に報告せねば。
カーテンコールが続く。
「感想は?」
設楽さんが拍手しながら話しかけてきた。
「……恥ずかしかったです」
正直に答える。
本当の意味は伝わらなくていい、と思いながら。
ところが、ニヤニヤ笑う設楽さん。
すでに、感動からいつもの調子に復活したらしい。
「オレも。あいつがあんな風に綾乃ちゃんに対する愛情全開で弾くの聴いてて、悶え死にしそうだった」
な、な、なんてこと!
「そりゃ分かるでしょ、分かる人には」
……穴があったら入りたい。