恋色シンフォニー
「よ、お疲れ。あやうく悶え死にするところだった」
恥ずかしいのでやめてください、設楽さん。
圭太郎はニヤっと笑っただけ。返す気力もないらしい。
「ま、上出来じゃん。さすがオレ様の弟子だな。ほれ、横になれ」

圭太郎はずるずると長椅子にうつ伏せになった。
設楽さんは圭太郎の首、肩、背中、腰、腕、脚に触っていく。
そして、
「耳と頭、切り替えとけよ」
と言い、マッサージを始めた。
押したり、さすったり、関節回したり。
たまに時計を見る。

圭太郎は、たまに、うー、とうなるだけで、されるがままになっている。
だいぶ疲れてるみたい……。

そうか。圭太郎がマッサージ上手なのは、設楽さんにしてもらってるからなのか。

しばらくして、
「よし、あと10分ってとこか。身支度と精神整えて出てこいよ」
設楽さんはそう言って、圭太郎の背中をバシッとたたいた。

「サンキュ。だいぶ軽くなった」
圭太郎は起き上がり、伸びをする。

「綾乃ちゃん、後よろしく」

「はっ?」

設楽さんは私にウインクをして部屋を出て行った。

よろしく、と言われましても……。

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