恋色シンフォニー
圭太郎は、
「さて」
とローテーブルに置いたスマホをいじってから、
「綾乃、おいで」
ソファに座り、私に向かって腕を広げた。
時間がないようなので、素直に従う。

私は圭太郎の脚の間に片膝をつき、頭をそっと胸元に抱え込む。
“お疲れ様。大好きだよ”
の気持ちをこめて。

圭太郎の腕が私の腰に回される。


静寂が訪れる。


圭太郎は何も話さず、動かず、静かに私を抱き締めている。

私はそんな圭太郎の邪魔にならないよう、じっとしていた。
体力と気力が回復しますように、と祈りながら。



しばらくして。
机に置かれた圭太郎のスマホが鳴った。
ぎゅっと腕に力がこめられた後、そっと身体が離れた。
圭太郎はアラームを止め、立ち上がる。

「よし、充電完了。ありがとう」

そこには不敵な笑みを浮かべ、気力に満ちたヴァイオリニストがいた。



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