恋色シンフォニー

話題を変えよう。
「彼女、オケの人?」
「はっ?」
「彼女、いるってきいたから、きっとオケの人なんだろうな、って」
「誰からきいたの?」
「この間、玲子さんから」
うーん、と考えてるけど。
「ああ。あれかな。早く帰るのは、彼女が待ってるからでしょ、ってしつこく言われて、面倒だから、そんなものです、って答えたことならあるけど」
それって普通、彼女いるって捉えられますが。
「だって、1日触らないと機嫌を損ねるお姫様が待ってることは本当だから」
楽器は、1日だけだって練習しないと、下手になる。
「渚ちゃんが、キスマークついてるの見たって言ってる」
「そんなヴァイオリンあるあるネタ、信じたわけ?」
ヴァイオリンにつける肩当てが鎖骨に当たり続けて、赤黒くアザになることがある。
知らない人からしたらキスマークに見える、ヴァイオリンあるあるネタ。
「何なら、見てみる? キスマークかどうか」
くすくす笑う三神くん。
「結構です!」
くそぅ、からかって。

「彼女、いないよ」

ふーん。

ふーん。そう。

緩みそうになる頬をおさえる。
いや。別に。
2人で話しててもいいんだなって、気持ちがふっと軽くなっただけだし。

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