恋色シンフォニー


「橘さん、もうお開きだから、しっかりして」
「しっかりしてるって。だーかーらー、三神くんはどのコンチェルトが好きかってきいてんの。チャイコ、ブラームス、ベートーヴェン、ブルッフ、ドヴォルザーク、シベリウス、ショスタコ……」
「ちょっと、もうみんな帰ってるから、とりあえず出よう」

「綾乃が三神くんにからんでる……」
「三神、飲んでないんだろ。同じ本部組だし、世話は任せた」
「三神っち、綾乃のこと頼んだよ!」
外野が遠くで何やら言ってるのがBGMみたいに聞こえる。

「シンフォニーでも、ショスタコの5番とか、マーラーの1番とか、聴いてみたいなぁ」
「コンマスソロある曲じゃん……っていうか、オケの編成大きくて、難しいなぁ。記念演奏会で検討します。……じゃなくって、はい、しっかり歩く!」
「あはは。三神くんもノリツッコミするんだ〜」
「ちょっと、ほんとに大丈夫?」
「だーいじょうぶだって! 」
ちょっとばかり趣味の話ができて、楽しくて、ふわふわするだけ。

ふわふわ。

ふわふわ…………

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