恋の指導は業務のあとに


あまりのびっくり発言で、食べていたタラコクリームパスタが喉に詰まりそうになった。


「す、す、す、すすす」

「あはははは。若葉ったら、超挙動不審。落ち着いて、ほらお水飲んで」


琴美がくれたお水をごくごく飲みほして、ようやく落ち着く。


「琴美ってば、なんてこと言うの~冗談にもほどがあるよ」

「ごめん、ごめん。でもさ、旅行中に何か言われてない?」


言われたかと訊かれれば、顔が熱くなる。

布団の上での出来事は、今思い出しても恥ずかしくて悶えそうになる。

男子にあんなこと言われたもされたのも、人生初だ。

でもあれは、懲りもせずに酔っ払った私への戒めなのだと思う。

そうでなければ、ちゃんとキスしてくれたはずなのだ。

それも、告白付で。


「それも違うよ・・・私がオコサマで、指導中の部下だから、気にしてるだけだよ」


そうなのだ。それだけなのだ。

だからいろいろ思わせぶりなことをされても、勘違いしたらダメなのだ。


「じゃあ、若葉は?私から見れば」

「あーーー待って!言わないで!自分でわかってるんだから!!」


恥ずかしくて、わあわあ騒いで必死で止める。

今まで蓋をしてきたのに、言葉にされてしまったら一気に意識してしまう。

どうして朝も昼も夜も羽生さんのことを考えてしまうのか。

もう答えは出ている。

< 78 / 111 >

この作品をシェア

pagetop