婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「なんなんだよ さっきから 何を根拠に…」
「何って 自覚ないの? おまえ なつが欲しくてたまらないって顔してるよ… 幸せになれとか言いながら、実はなつに未練タラタラで いっそ 無理矢理にでも奪ってやろうかって企んでる顔…」
圭司の言葉に、松井くんは観念したように言った。
「ああ そうかもな さっきも理性飛んだし…
この先、何するか自分でも自信ねーわ なつのいい同期で終われるうちに、こんな未練は断ち切った方がいいのかもな… なつ ごめんな 俺は昔と何も変わってない なつの幸せを心から願えない最低な男のままだよ もう 二度と
現れないから、安心しな…」
そう言って私に笑った松井くんの目は、なんとも切ない色を帯びていた。
「松井くん…」
これが私と松井くんの最後の別れなのかと思ったら、じわじわと涙が溢れてきた。
「あ そうだ 携帯だっけ? 消しゃいいんだよな? もう これで連絡もできないし、俺には何もできねーよ」
松井くんは自分の携帯を圭司に見せると、そのまま背中を向けて出て行った。
こんな別れ方で、本当にいいのだろうか…
気づくと私は、裸足のまま、松井くんの後を追いかけていた。
「待って! 待って 松井くん!」
私は、松井くんを引き止めるように、ぎゅっと彼の背中にしがみついた。
「なつ…」
松井くんの足がピタリと止まった。
「あのね 松井くん 松井くんのこと最低な男だなんて思ってないから 私は松井くんにいっぱい助けられたよ…。松井くんには感謝しかないんだから ありがとう 松井くん 大好きだからね!」
「バカ なに旦那の目の前で俺にしがみついてんだよ 知らねーぞ 泣かされても もう おまえのことなんか慰めてやんねーんだから…」
「うん 分かってるよ じゃあね 松井くん」
そう言って、背中を向けた私の腕を、松井くんがグイッと引き寄せた。
えっ?と顔を上げた瞬間、松井くんの唇が私の唇に重なった。
「ほら やっぱり 俺は、最低な男だろ?」
松井くんは私の耳元でそう呟くと、茫然と立ち尽くす私を残して去っていった。
どうしよう…
振り向けない…
圭司が怖くて、振り向けないよ…
今更ながら、自分の犯した失態に激しく後悔した。