婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

◇◇◇
「なつ…。今朝のこと、まだ拗ねてんの? もう いい加減、機嫌治せって…」

運転席の圭司が、ため息交じりにそう言った。

「だって 裸見られちゃったんだもん… そんなに簡単に気持ち切り替えられないよ…」

「いやいや 見られたのは俺だからね…」

すかさず突っ込む圭司…。
そう… 旅館の人に裸を見られたのは圭司であって、私ではない…。

チャイムが鳴ったあの時、圭司が咄嗟に、私に浴衣を着せたからだ。

「そうだよ 圭司の裸を見られたから、ショックなんじゃない…」

私は顔をうなだれながら呟いた。

だって、部屋に入ってきたのは、若い女中さん達だったんだもん…。

『キャ! ごめんなさい…』

彼女達はボクサーパンツ一枚の圭司を見た瞬間、恥ずかしそうに顔を赤らめていたのだけれど…

『あ ごめんね ちょっと寝ぼけてて… 今すぐ 着るから許してね…』

なんて、爽やかに圭司が笑うものだから…

『いえ あの ゆっくりで大丈夫…ですよ。私達、ここで待ってますから…』

と、彼女達は妻の私などお構いなしに、圭司の引き締まった色気たっぷりの体を、うっとりとした顔で観賞し始めたのだ。恥じらうどころか、目にはハートマークまで浮かべて…。

「もう いいじゃん… あんな若い子達に裸なんか見せた俺のが犯罪なんだから… 通報されなかっただけ、まだましだよ…」

もう 圭司はちっとも分かってないよ…

「あのね 圭司… 圭司の裸見て通報する女の子なんている訳ないじゃない… 例え圭司が痴漢したって、皆、喜んで触らせてくれるよ きっと」

「んな訳ないだろ… 俺は一体何者だよ。」

圭司が呆れたように言った。

「でも、もう二度と他の人に圭司の裸見られるのはヤダからね…」

涙目になる私を見て、圭司はクスッと笑った。

「はいはい 分かったから もう そんな顔すんなって… あっ なつ なつのの大好きな牧場があるみたいだよ 行ってみる?」

圭司は牛の絵の描いてある大きな看板を見つけ、私に言った。

「えー ホント! 行ってみたい! ねえねえ 乳しぼりとか、やらせてくれるのかな~?」

一気にテンションが上がり、目を輝かせる単純な私…。

「どうかな 行ってみないと分からないな… あー でも なつはやっぱ、やめといたら? 北海道の時みたいに、また 蹴られるかもよ?」

圭司が思い出したように、ククッと笑った。

「あれはっ… あれはね 圭司に恋した牛が私に嫉妬したからなんだよ きっと…。私に交代した途端、蹴るなんて、そうとしか考えられない…」

「いや 単になつが下手くそだっただけだろ…」

「うっ…」

まあ 確かに不器用な私が、そう簡単にミルクなんで出せるとは思っていなかったけど… でも、まさか蹴られるなんて思ってもみなかった。そんな 話聞いた事ないもん。

「ねえ 圭司は何であんなに上手だったの? 牛の方も気持ちよさそうにしてたし… 本当はどこかでやったことあったんでしょ?」

「ないよ あー でも…」

「ん?」

チラリと私の胸元を見た圭司に、嫌な予感…

「乳しぼりはないけど、乳もみならしょちゅう… ね?」

そう言って、圭司はニヤリと笑った。

「もう! そういうこと言わなくていいから!」

こうして、ちょいちょい下ネタを挟んでくる圭司に呆れつつも、夫婦水入らずの温泉旅行を、私は思い切り楽しんでいた。






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