政略結婚に隠された真実
真っ赤になったり真っ青になったりの愛梨は、ぎゅうぅっと大翔の袖を掴んだ。

大翔は愛梨を見て、そっと背中を押した。

「愛梨。仕事頑張ってね。行ってらっしゃい」

車の横で愛梨に手を振り、周囲の人間には眩しい笑顔で見送った。

愛梨は、大翔にぺこりとお辞儀をして、瑠依の方へ走って行った。

「おはよ~愛梨チャン。さて、今日のランチは愛梨のおごりで、たぁ~っぷりお話を聞かせていただきましょうね」
「お・・・おはよ・・・瑠依サマ。了解しましたデゴザイマス。」

チラッと後ろを振り返って大翔の方を見ると、ゆっくりと発進していくのが見えた。


あ、送ってもらったお礼言ってなかった!
あ~~~~どうしよう。こういうところはちゃんとしておかないとッ!
そっそうだ!ひとまずLINEでお礼を入れて・・・。


あ―――!!連絡先知らないッ!!


大翔の連絡先も、会社も、家も、全く何も知らないわッ。
どうやってお礼を言えばいいの?
碓氷さんが来てくれないとお礼も言えないとか・・・情けない。


そう思って、肩をがっくりと落とした。

仕方ない。後でお父さんに聞こう・・・。いや待てよ、あの父が簡単に教えてくれる?
それは“否”だわ。こういう時は、持つべきは弟よッ!

うん、そうだわ!っと一人浮き沈みしてる愛梨は、瑠依に大声で呼ばれた。

「ほら、愛梨!早くおいで!置いてっちゃうよ~」
「あ、ちょっと待ってー!」

人だまりの間をバタバタと抜けて行った。
その時に、好奇の目を向けられているのがヒシヒシと感じた。



しかしこの後、この朝の出来事以上に、更なる出来事が愛梨を襲った。
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