エリートな先輩の愛情を独り占め!?
ずっと歩き続けていた先輩が、公園の前で止まった。夜風が先輩のマフラーを宙に舞いあげた。
私は、八谷先輩の背中を見ながら、ぽつぽつと独り言のように語り始めた。

「……ベーグルのシール、あれもうキャンペーン終わっちゃってるんですよ。遅いですよ」
「……ごめん」
「八谷先輩がいなくなってから、目の保養がいなくなって生産のパートさんがやる気なくしてるそうですよ」
「……ごめん」
「まあ私はお陰様で、八谷先輩ファンからのいびりが無くなって、プラスの面もありますけど」
「……ごめん」

なんでかな、言いたいことはこんなことじゃないのに。
会ったら伝えたいことが山ほどあったのに。
いざという時に言いたいことが言えないのなら、言葉なんかなんの役にも立たないじゃないか。

「最近、先輩としょっ中行ってたラーメン屋にひとりでも行ってるんですよ。行くのはすごく久々だったんですけど、やっぱり美味しくて……」
これも違う。そうじゃない。今しかないのに、なんでちゃんと言えないの。
「すごく……美味しくて、そうしたら、美味しいことを誰かに伝えたくなって隣を見たけど、でもそこに、先輩がいなかったっ……」
涙を堪えながら必死にそこまで話すと、ぐいっと腕を引かれて八谷先輩に抱き締められた。
「タマっ……泣くなよ」
八谷先輩の体温に包まれて、ついに涙腺が崩壊してしまった。

もうなんでもいい。言ってしまえ。
そう思った。

「八谷先輩、私、確かに八谷先輩とただの先輩後輩でいることも楽しかったですっ……でも、八谷先輩から離れて、八谷先輩がいない毎日が寂しすぎて、どうにかなってしまいそうでしたっ……あんなに美味しかったラーメンも、本当は全然味が感じられなかった、八谷先輩がいないとダメでしたっ……」
「もういいよ、わかったから、タマ、もう、わかったから……っ」
「元の関係に戻りたいなんて嘘です、たとえ彼女がいても八谷先輩が好きです、大好きですっ……」
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