ライ・ラック・ラブ
正さんが帰ってすぐ、佐久間さんも暇を告げた。
私は、いつもどおり「佐久間さんを見送ります」と言うと、父は一つ頷いて屋敷へ入った。

私たちは示し合わせたように、佐久間さんの車を停めているところまで、いつも以上に時間をかけて、ゆっくりと歩いた。
お互い無言で歩いているからか、庭の草のどこかにいる虫の鳴き声までもが聞こえてくる。
雨上がりの湿った空気に乗って、微かな花の香りが周囲に漂う。
この平穏な空気がいつまでも続けばいいのに、と、なぜか私は強く思った。

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