好きやった。
……大丈夫、ちゃんと笑えとったよ。
月島が彼女のもとに駆け寄っていく背中を見つめながら、上げていた口角をすっと戻した。
笑ったフリとか、なんでこんなにもつらいと感じるんやろう。
ほんまに早く……慣れやななあ。
×××
「うむ……悩む……」
ファンシーな雑貨屋の商品棚を、困り顔で眺めながら歩く月島。
その少し後ろを歩くウチは、すでに精神的な意味で疲れていた。
月島と約束していた日曜日。
駅ビル内にある雑貨屋やアパレルショップを見て回ること、かれこれ2時間。
彼女へのプレゼントを何にするか、月島は未だに迷っていた。
店内をうろちょろしている月島に尋ねる。
「なあ、まだ決まらんの?」
「そう急かすなや。つうか井ノ原、おまえちゃんと考えてくれとんの? さっきから大して棚見てへんし、全然選ぶの手伝ってもらっとる気がしやんのやけど」
「失礼やなあ。ウチ、ずっと店回るごとにアンタにいろいろ勧めとるやんか。アンタが全部いまいちや言うて、ウチの意見は拒否ばっかされとるけど」
「しゃあねえだろ。なんかこう……ピンとこねーんだよ。井ノ原が勧めてくれるやつも、別に悪いっていうわけとはちゃうけど」
渋い表情でもごもごと言う月島に、ウチまで顔がしかんでくる。
「なんでもええけど……はよ決めなよ。ウチが勧められるような店もここが最後やし」
そう言って、月島とは逆方向に向かった。