好きやった。


よく留美と一緒に立ち寄るうちに、いつしかウチも好きな店となっていた。

男っぽい顔立ちの自分に似合わないから、好んで可愛いらしいものを身につけたりはしないけど、見ているのは好きだから。


ウチが気に入っとる店の中では、唯一可愛らしさが全面に出ている雑貨屋。ここならあの子の好みに合うものがあるかもしれないと、望みを抱いて月島に勧めた。

今度こそ、プレゼント決まるとええんやけどなあ……。

決まりますようにと願いながら目の前の商品棚に目を向けたとき、以前留美が購入していたキーホルダーに新商品が出ていることに気づいた。

留美がやけに気に入って即座に購入していた、ヒツジのぬいぐるみのキーホルダー。その隣に、笑っているサルのキーホルダーが新しく並んでいた。

このシリーズの動物キーホルダーは、鳴き声つきのぬいぐるみになっている。

ヒツジのぬいぐるみの鳴き声は確か、可愛らしくデフォルメされている見た目とは異なり、やけにリアルなものだった。しかもなぜか大群の鳴き声。

そのギャップが面白くて、留美と二人で笑ったことは記憶に新しい。


「まさか、これも……」


興味本意で、サルのお腹に貼られている“PUSH”と書かれたフェルトの部分を指で押してみる。

すると。


――キキッー! キキー、ウキーッ!


甲高い鳴き声がぬいぐるみから発せられた。

なんか、これって……。


「ふはっ、なんでそのぬいぐるみ怒っとんのさ」


突然声が聞こえてきて、びくりと肩が飛び上がる。

慌てて声がした方に向くと、月島が声を出して笑いながら近づいてきているところだった。


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