好きやった。
……なんて、虚しい想像をしたところで、何になるというんだろう。
一番ほしい月島の心さえ手に入らないのに、こんなあり得ない未来を思い浮かべてもつらくなるだけだ。
忘れよう……。
「……だから月島、もう少し気軽に選びなよ。あんま深く考えすぎると、何も買えやんで?」
「そうやよな……うん。もう少し、俺があげたいと思うもの探してみるわ」
先に歩き出したウチの隣に並んで、月島がふわっと笑った。
プレゼントは失敗できないと張り詰めていた気持ちが、ちょっとだけ緩んだようだった。
それでいいんだよ、月島。
無理してよくしようとしなくても、月島らしくいれば、きっと彼女が喜ぶものを選べるはずやから。
×××
「はい、井ノ原。肉まんの半分な」
「ありがと。これはあんまんの半分な」
「サンキュー、ってのもおかしいか。どっちも俺が買ったやつやし」
「あはは、確かに。ゴチになりまーす!」
「たーんと食いたまえ、半分ずつやけどな」
駅ビルからの帰り道、ウチと月島は公園に寄って休んでいた。
ベンチに座るお互いの手には、二人で半分こにした肉まんとあんまんが持たれている。
月島が今日のお礼に奢ってくれるというので、さっき近くのコンビニで買ってきたものだ。
ウチが肉まんとあんまんのどちらにしようかと悩んでいたら、半分こにしようと言ってくれたんだ。こういう気遣い、好きだなあ。
自然と緩んだ口元を誤魔化すようにあんまんにかじりつく。ウチが好きなこしあんだ。