好きやった。
隣で月島が立った気配がした。荷物を持った音が聞こえたから帰るのだろう。
こんな微妙な空気で一緒に帰ってもいいのかと逡巡していると、俯いているウチの頭にぬくもりが乗った。
「そろそろ帰るぞ、井ノ原」
ぽんっと乗せられた月島の手が離れていくのと同時に顔を上げる。
夕日を浴びて笑う月島がこちらを見ていた。それからウチが追いつけるようなスピードでゆっくりと歩き出す。
「……うん」
唇をきゅっと結んで髪に残るぬくもりをそっと撫でると、月島のあとを追いかける。でも隣を歩く勇気はなくて、斜め後ろを歩き続けた。
足音で、ウチがそばにいることはわかっていたのだろう。月島が前を見たまま口を開く。
「俺さ、井ノ原のこと大事やで」
「……」
「大事な友達やから……悩んだり困っとるなら、いつでも力になるで」
「……うん、ありがとう」
わかっとるよ。月島の優しさなんて。
ただウチには少し残酷で、その優しさに上手く甘えられないんだ。
「井ノ原が俺のこと助けてくれたみたいに、俺も井ノ原のこと助けたいって思っとるからな」
「ウチ、月島に何かしたっけ……」
「いつも助けてもうとるよ。この前美亜と喧嘩したときだって、おまえに助けてもらった」
「……っ、」
彼女の名前が唐突に出てきて、ひゅっと息が喉に詰まった。
こんな場面でもあの子の名前に過剰に反応してしまう自分が憎い。