カリスマ社長に求婚されました
「誰って……」

奈子さんの名前を出すのには、どうしても抵抗がある。

彼女の未練を優一さんには、知らないままでいてほしい。

と思うのは、きっと私が奈子さんに勝てる部分が見出せないから。

才能もあって可愛くて、それでいて優一さんが好きになった人……。

別れた理由はいろいろあるのだろうけど、奈子さんの想いを優一さんには知られたくない。

優一さんが、彼女を気にかけるきっかけを与えたくなかった。

そんなズルさもあって、答えることができずにいると、優一さんの諦めに似たため息が聞こえてきた。

「言いたくない……か。それならとりあえず、今は聞かないでおく。だけど、それすら教えてもらえないなら、距離を置きたいという気持ちは受け入れられない。オレは、茉奈が好きだから」

優一さんはキッパリと言って、私を優しく抱きしめた。

「優一さん……」

彼の言うことももっともで、結局あいまいに話して優一さんを混乱させた自分が情けない。

こんなことなら、もう少し考えてから口にするべきだった……。

しばらく優一さんは抱きしめてくれていたけど、自己嫌悪でいっぱいの私は、彼の温もりに浸る気分にはなれなかった。
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