カリスマ社長に求婚されました
今回は留守電に接続されなかったし、圏外のアナウンスもない。

突然、通話が切れた信号音だけが聞こえて、一瞬ア然としてしまった。

「な、なんで? 電話に出てくれないの?」

もう一度かけなおすと、今度はワンコールで切れる。

「やっぱり……。だけど、どうして?」

今日は、クリスマスイブってだけじゃなくて、私の二十八歳の誕生日なのに。

一昨日は、いつもと変わらない明るい調子で、『イブの日、楽しみにしてろよ』って言ってくれていた。

それなのに、どうして電話に出てくれないんだろう。

約束を破られたらしいことで頭の中は混乱して、まともな思考回路ができそうにない。

だけど、ここで待っていてもムダなことだけはハッキリ分かる。

とりあえず、この場から離れてみたけれど、気持ちはまるで落ち着かない。

和也のマンションに行ってみようかな……。

まずは、きちんと話ができないとどうしようもない。

こみ上げてくる涙を抑え、ショップが連なる通りを進んだ。

ここは街路樹が青色の電球で装飾されていて、夜になると眩しいくらいに光を放っている。

ロマンチックこの上ない場所を、私は絶望感いっぱいの気持ちで歩いていた。

とにかく、デートをドタキャンされた理由が分からない。

だいたい、和也に変わった様子はなかったのだから。

「強いて言うなら、仕事の付き合いが多くなったってことかな……」

それも営業職の彼なら、不自然なことじゃないと思っていたけど、もしかして仕事の付き合いではなかったかもしれない。

いろんな考えを巡らせていたとき、ふと少し先の人混みの中に、和也の姿が見えた。
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