カリスマ社長に求婚されました
「いた!」

やっぱり来てくれたんだ。

なにか急用が入って、待ち合わせ時間に間に合わなかっただけに違いない。

嬉しさでいっぱいになった私は、気がついたら小走りで駆けていた。

「和也!」

彼が立っていた場所はちょうどジュエリーショップの前で、ますます気持ちが高ぶってくる。

和也は今日、私が欲しいものをプレゼントすると言ってくれていた。

以前から、好きなジュエリーブランドの話をしていたし、指輪が欲しいことは遠回しに伝えていた。

もしかして、それを考えてここでジュエリーを見てくれていたのかもしれない。

「和也!」

人混みの中を縫っていき、ようやく和也に会えたというのに、彼は私に気づくなり眉をしかめる。

その様子のおかしさに、私も自然と笑顔が消える。

「誰? 和也の知り合い?」

代わりに明るい調子で声をかけてきたのは、和也の後ろからひょっこり顔を出した女の人だ。

彼女は、私と同じくらいの一五五センチくらいの身長で、二重の目がクリッとした可愛い人。

華奢なスタイルで顔立ちがハッキリとした派手なルックスに見覚えがあり、すぐに和也の会社の同期の人だと分かった。

街で数回、和也といるときに出くわしたことがある。

「覚えてないか? オレの元カノ。坂下茉奈(さかした まな)」
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