好きって言っちゃえ

「…」

光俊の横で悠一も緊張の面持ちで剣二の返事を待ってる。なぜなら、この写真集を作るうえで、剣二は全てを若手に任せ、一切携わっていないのだ。撮影に出かけたのは新人の3人だが、アルバムの構成を主にしたのはデザイナーである光俊で、全体にアドバイスなどをしたのはチーフである悠一なのだった。皆の緊張の眼差しを感じながら剣二はいきなり、右腕を後ろに回して、ガシッと光俊の肩を掴んだ。ビクっとする光俊。そして剣二は、

「…凄くいいよ。流石、俺が見込んで雇っただけある」

と、眉毛を段違いにしてニヤリと笑って見せた。その言葉に、息が止まりそうだった光俊の緊張が一気に解け、

「あざーッすっ!」

満面の笑みで思わず大きな声が出た。

「軽っ」

その様子につい小声で突っ込んでしまう舞。そんな二人に挟まれつつ、ホッと胸をなでおろす悠一。
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