ビタージャムメモリ

「姉が言うには、どう見ても、そうとしか考えられないことを、してたと」

「そん、あ…!」



思わず口走ってから、青くなった。

あ…! じゃないよ、私…!

先生が、じっと私を見る。



「あの、それは、わ、私があの、泣いたのに対して、歩くんなりの、慰めというか励ましというか」

「…正直、そのへんがいまだに釈然としないんだけど、歩とは結局、どういうことになってるの?」

「ど、どういうも何も、さっきも言いましたように、私と歩くんは、なんでも」

「何もないってこと?」

「もちろん…」



です、と言い切れなかった自分の気の弱さに、泣きたくなった。

キスも、何回したか、というかされたかわからないくらいで。

抱きしめられたこともあれば、抱きついたこともあり、覚えてないけど目の前で服を脱いでる。

それはとてもじゃないけど、保護者である先生に対して、はい何もありませんと胸を張れるような関係では、なかった。


口を開けたまま、言葉が続かなくなってしまった。

そんな私を、半分不思議そうに、半分訝しむように見ていた先生が、ついに納得したような表情になったのを見て、心底焦る。



「あのっ、ちが、違います!」

「いいよ、別に慌てなくても」

「よくないです…!」



私はもう、半泣きで。

なんとこの状況で駅へ向かいかける素振りを見せた先生を、すがるように引き止めた。

先生はマイペースに、私を引きずりながら誰かに電話をしている。



「出ないな。もし歩に会ったら、そういうわけなので僕の帰りは遅くなると伝えておいて」

「伝えますから、話を聞いてください!」



やっと足を止めてくれたと思ったら、ふーっという長い吐息が、寒さのおかげではっきり見える。

絶望的な気持ちでそれを見つめた矢先、いきなり視界が塞がれ、ひゃっと悲鳴が漏れた。

何か柔らかいものが、顔に押しつけられて、何も見えない。



「なんだかなあ」

「先せ…」

「どっちに妬いたらいいのか、困るね」


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