ビタージャムメモリ
「歩くん、冬休みもずっと私のところにいましたし、先生と一緒にいたいんじゃないでしょうか」
「そんな可愛い動機じゃないと思うけど」
シンプルなニットにデニムというくだけた格好の先生は、会社で見るのと同じ人とは思えないくらい雰囲気が軽くて、かっこいい。
髪もいつもほどかっちり上がっていなくて、全体的に柔らかくて、今気づいたけど、こうしていると実年齢よりだいぶ下に見えるタイプだ。
大人びた外見の歩くんと、兄弟みたいにも見える。
コーヒーショップの前のテラス席に腰を落ち着けたところに、歩くんが戻ってきた。
手には紙コップふたつと、ソフトクリーム。
「この寒いのに、よくそんなもの食べられるな」
「だって売ってるんだぜ、食えるってことだろ」
上着を着ないまま降りてきてしまった先生は、肩をすくめるように腕組みして、信じられないという顔をした。
歩くんは私の隣に座り、コップのひとつをくれる。
「甘酒配ってた。このくらいなら弓生も飲めるよな」
「私、そこまで弱いイメージ?」
「ちょっと飲ませたらべろべろになってたじゃん」
「それは」
変な話、持ち出さないでよ。
「何飲ませたんだ」
「ルシアンとか、ロングアイランドとか、そのへん適当に」
「典型的なレディキラーじゃないか」
先生が呆れ声を出した。
「レディキラーってなんですか?」
「飲みやすいけど実は強いカクテルのことだよ、女性を酔わすために男が飲ませるからそう呼ぶ」
「飲み慣れた女だと、潰そうとしてんのバレちゃうんだけどな。弓生なら絶対平気だと思った」
「私、けっこうあれ、トラウマになってるのに…」
「もらった酒を確かめもせず飲むなんて、バカだって話だよ」
「むしろ謝るとこでしょ!」
「はいはい」
ごめんごめん、というおざなりな謝罪をもらい、それが年少者の態度かと上から言ってやりたくなる。