ビタージャムメモリ
半泣きでうずくまる私の頭を、先生がなぐさめるように叩く。

甘い時間からのこの騒動に、顔を見合わせて笑ってしまった。



これからも、ずっとこんな感じに違いない。

歩くんを中心に縮まった、私と先生の関係は、これからだってきっと、歩くん抜きには進まない。

からかわれて、かき回されて。

それでも私たちの、一番大事な歩くん。


絶望していたあの冬の私に、教えてあげられたらいいのに。

大丈夫、いつか絶対笑えるよって。

もしかしたら、一緒に笑ってくれる人さえ見つかるかもしれないよって。



「さらわれないようにね」

「大丈夫ですよ」

「弓生は歩に甘いからな…」



一番甘い人に、そんな疑わしげな目で見られたくないです。

先生はため息をつくと、まあとりあえず、と身体を起こし、チノパンに脚を通した。



「今日は祝ってやらないと」

「あっ、そうだ、私も用意…」



服がないことを思い出し、丸まる私を、先生が振り返って笑い。

自分も少し照れくさそうに、首を伸ばして優しくキスを落とす。


ぬくもりに包まれる、幸せな春。

精一杯やろう、これまでもそうだったように。

寒い冬も、足を止めずに前に進もう。

どんなに遠く思えたって、次の季節は必ず待ってくれている。

歩くのをやめさえしなければ。



「あっ、またいちゃいちゃしやがって。早くしろよ」

「ノックをしろ!」



いきなり開いたドアに、たまらず先生が枕を投げた。

私も、先生に伸ばしかけていた腕を慌てて引っ込める。



「多感な青少年が、同じ屋根の下にいるんだぜ、控えろよなー」

「見てないところでさんざん遊んどいて、何言ってる」

「弓生のパンツもらってこよ」

「やめて、やめて!」



もう大騒ぎだ。

こんなのもきっと、次の季節の予感。


笑って泣いて怒って、みんなで歩く先にある。



甘くて幸せな、明日への序曲。







Fin.

──Thank you!


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