ビタージャムメモリ
追い払われたはずの歩くんは余裕で、腰を上げる様子もない。

…あ!

私の服もリビングだ…!

すがる思いで先生を見ると、さすがの先生も、気まずそうな表情を隠せずにいる。

歩くんがにやにやしながら脚を組んだ。



「拾ってきてやろうか」

「やめて!」

「目の毒だったぜ、ほんと、生々しくて」



いたたまれず耳をふさいだ手に、音を立ててキスされた。

私に覆いかぶさるようにして、歩くんが耳元でささやく。



「隙見せてんじゃねーよ」



あれ、この感覚、さっきも、確か…。

そろりと目だけ動かすと、人の悪い笑みが間近にある。

歩くんは目を合わせたまま、見せつけるように肩にも口づけた。

覚えのある熱。


先生じゃなかった。

歩くんだったんだ…。



「はは、真っ赤」

「離れろ、歩」

「はいはい、いっちょまえに独占欲見せるくらいならさあ、こんな無防備に置いとくなよなあ」



先生の衣服は、シャツ以外はこの部屋にある。

落ちていたそれを投げてよこし、歩くんは携帯を取り出すと、「はい、ごちそうさん」とこちらに画面を見せた。

そこには、かろうじて…本当にかろうじて、まずい部分だけは布団で隠れています、という状態で熟睡している私がいた。

ぎゃあー!

これには先生も焦った声を出す。



「消せ!」

「やだよ、使い勝手よさそうじゃん」



使うって何に!?

先生の手をかわして立ち上がると、歩くんは実に可愛らしく片目をつぶり。



「忘れんなよ、気抜いたら、かっさらうからな」



宣言して、笑いながら出ていった。

取り残された私は、頭を抱える。



「すみません、私が先に寝ちゃったんですよね」

「いや、俺もうっかりしてた。今後、気をつけよう」

「はい…」


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