ビタージャムメモリ
ひえー。

向こうが罪に問われてもおかしくないじゃないか。

でも、あのお店では歩くんは年齢をごまかしてたわけだから、もしかしたら二十歳くらいの子という認識だったのかもしれない。

たいした違いはない気もするけど…。



「そういうの、感心しないよ」

「別に、年齢なんて関係ねーだろ」

「そこじゃなくて、店長さんの恋人なんでしょ」

「俺が何かしたわけじゃねーもん、あっちからすげえ誘ってきて」

「それでも、嫌ですって言わなきゃ」



結局、そのせいでそんなひどい怪我をさせられたわけで。

大事な演奏のバイトのほうも、なくしかけたわけで。

そんな無責任な女の人に、応えたりしちゃダメだ。



「だから無視してんじゃん。店長とも、縁切るって約束したしさ」

「今度は最初っからそうしなね」

「出たよ、年上風」



鬱陶しそうに舌打ちされて、かちんと来た。



「あのね、年上なの実際、だいぶ」

「それにしちゃ頼りねーよな、すぐあたふたするし」

「その頼りない手を必死に握ってたのは誰よ」

「手?」



コーヒーカップを片手に、歩くんが眉をひそめる。



「この間、病院からずっと私の手を握って離さなかったのは、歩くんなんだからね、先生だってそれ見て、完全に誤解したんだよ!」

「は? …俺?」

「そうだよ、着替えさせる時だってなかなか引き剥がせなくて、大変だったんだから」



意外なことに、歩くんはすぐに言い返してはこず、その事実を受け止めかねているように、マジかよ、と当惑気味につぶやいただけだった。

私は行きがかり上、すっかり攻撃的な気分になっていたので、そんな彼に指を突きつけ、さらに言った。



「経験豊富ぶってるけど、歩くんなんてやっぱりまだ17歳で、甘えたい時期の、子供なんだからね」

「んなこと言われたって、覚えてねえし…」

「だからこそでしょ。口ではきついことばっかり言ってても、私のこと、内心では頼りにしてるし、実はけっこう好きなんだよ!」


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