性悪女子のツミとバツ

「随分と、勝手ね。」

繋がれた手に目を落として、彼女は呟いた。
繋がれた手を見つめる彼女は、未だ俺の真意をはかりかねているようだ。

「萌、好きだよ。愛してる。」

今度は、ストレートに表現すれば、驚いたような表情の君が顔を上げて、二人の視線がしっかりと絡み合った。

「返事は、しばらく要らない。落ち着くまで、ゆっくり考えればいい。この部屋で。」

にっこりと笑って、俺は萌の手を握ったまま立ち上がった。
言葉を発しないままの彼女を立ち上がらせると、そのまま抱き寄せる。

「私は、この部屋に軟禁でもされるの?」

俺の耳元で、彼女が呟いた言葉に笑って返す。

「軟禁だなんて、人聞きの悪い。保護だよ。療養の場所を提供するだけ。」
「じゃあ、自分の家に帰るわ。」
「だめだよ、それは。絶対に。」
「どうして?」
「だって、俺の腕の中じゃないと眠れないんだろう?」

俺は得意げに、笑ってやった。
入院中に俺を呼び出した精神科の医者は言った。
彼女は、ずっと酷い不眠に悩んでいたはずだと。
でも、俺はその言葉に思わず首を傾げたんだ。
だって、萌は俺の腕の中でいつもスヤスヤと寝ていたから。

「あなたって、ズルいわ。」

俺の主張が図星だったのか、彼女は気まずそうな表情で、可愛らしく悪態を付いた。

「まずは、ベッドに行こうか。」
「ちょっと、まだ昼間よ。」
「そんなに期待されても、エロいことは当分するつもりないから。悪いな。」
「…別に、期待してないわよ!」

必死に抵抗する彼女を、俺はひょいと抱き上げた。
お姫様だっこなんてするのは初めてだったが、やせ細った彼女はいとも簡単に俺の腕に収まった。

「とりあえず、ゆっくり休もう。」

耳元にやさしく囁きかければ、彼女はゆっくりと瞼を閉じた。
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