世界の終わりに
「教授、斧は何処ですか?」
教授は暖炉にあたりながら
ソファに座って本を読んでいた。
教授は日中、ほとんど本を読んで過ごしている。死期が近い彼には、動く気力が残されていないようだ。
ー何に使うんだい?
私は野うさぎを殺すために斧が必要なことを
教授に話した。
教授はしばらく無言で私を見つめて、何を思ったのか、立ち上がり
暖炉の上の写真立てを手渡した。
ー野うさぎは逃がしてやりなさい。代わりに、この写真を燃やしてその灰を埋めなさい。
「いいのですか?大切な写真ではないのですか?」
ーいいんだ、どうせ古い写真なんだから。
私は写真立てを受け取り、教授の言われた通りに写真の灰を穴に入れて埋めた。
逃した野うさぎは勢いよく森に駆けて行った。