愛してるなんて言わないで


「バツイチ…ということは一度、結婚に失敗したということだぞ?


そんな女性と将来を考えるということは…

翔太、社会での立場のお前の評価も悪くなる。

そこまで考えてて言ってるのか…?」




ずっと想像していた悪い予想が


1つ1つ的確に


大好きな人のお父さんの口から

ボウガンのように飛んでくる。



翔太さんのお母さんは口を噤んだまま

2人の話しを黙って聞いていた…。



もう

逃げ出したい。


「結花さん、あなたも息子を思うなら…

真剣に息子と向き合い

どうするべきかを考えていただいたい。」

お父さんの言葉はごもっともだ。



静かに頷いた私の横で


翔太さんが口を開いた。




「彼女は真剣に考えてくれてたからこそ

身をひこうとしてくれた…。

それが彼女の優しさなのに。

納得できなくて、わがままを言ってるのは俺なんだ。


彼女の過去も未来も


…颯太も背負う覚悟ができたから


父さんたちに紹介したいとおもったんだ。」

翔太さんの言葉は

真っ直ぐに

ここにいるみんなの耳に届いた。



「肝心の…結花さんの方にはその覚悟はないんじゃないのか?」


「彼女の覚悟を知る前に

彼女に俺の覚悟を伝えたかった。


だから勝手にこの席を設けたんだ。」



はぁ…。と深いため息をつくお父さん。

「結花さん…」


お父さんの呼びかけに顔をあげた。


間近で見るお父さんは

翔太さんがそのまま歳をとったように思えるほど


顔立ちが似ている。




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