地味子さんの恋愛事情
急に抱きしめられたことに驚いたけれど、
「無理」

そう言って私は竜馬と躰を離した。

「あなたたちのこと、私は好きよ。

でもあなたたちが言っている“好き”と私が言っている“好き”は違う。

私が言っている“好き”は、兄弟として――それも、家族としての“好き”って言う意味なの」

「何だよ、それ…」

呟くように言い返した竜馬だったが、その後に出てくる言葉は浮かばないようだった。

「そう言うことよ」

唖然としている竜馬に向かって、私は言った。

私は閉まっているドアの方に視線を向けると、
「大河、そう言うことだから」
と、声をかけた。

「えっ?」

竜馬が驚いた顔をしたのと同時に、ドアが開いた。
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