嘘から始まる恋だった
「……あっ、あぁ」
義兄の顔が恐ろしいと思うのは私だけだろうか?
高貴が私の頭をポンと優しく叩き、義兄に向き直る。
「そういえば、麗奈は君の義妹だったんだね。知らなかったとはいえ、君には悪いことをしたと思っていたんだよ」
顔が強張っていく義兄に追い打ちをかける高貴。
「君のかわいい義妹の彼氏が上司だとやりにくいだろう⁈」
「……いえ、そんなことはないです」
「そう⁈昨日みたいにあり得ないミスをするぐらいだから、動揺しているのかと思っていたんだが…俺の思い過ごしだったかな」
「……」
「2度と初歩的なミスはしないでくれ…俺も公私の区別はつけないといけない。麗奈のお義兄さんだからと言って目を瞑るのは1度だけだ」
どんなミスをしたのか知らないが、厳しい表情の高貴に対して、高貴を見る義兄の目は睨みつけているように見える。
何かイヤな予感がする。
「もう、部長…そんな怖い顔してるから麗奈が脅えてますよ」
冷ややかな空気が漂う中、優香が冗談まじりに場を和ませようと話の間に入る。
「……ごめん、麗奈。怖かったか?」
私に向ける高貴の表情が和らいで、ううんと首を左右に振るだけの私。
義兄が高貴に向ける視線に只ならぬ何かを感じ、この場から早く離れたい私は、高貴の腕にしがみついた。
しがみつく私の手の甲を撫で、2人に申し訳なさそうに
「呼び止めて悪かったね。野村さんとお義兄さんの邪魔をしたようだ。俺たちは帰るよ」
「いえ…そんな……」
「じゃあ、また来週」
「麗奈、またね」
笑顔で、手を振る優香。
「うん…また来週ね」
「……」
義兄は何も言わず、ただ、その様子を見ているだけ……
優香を残してきて大丈夫だろうか?
2人に背を向け歩いていく高貴の表情を伺う。
「お前が心配することじゃない。彼女は大人だ…自分で判断するさ」
私の言おうとした事を先回りして答える高貴。
「そうだけど…」
「いいか…奴が何を考えて野村さんに近づいたのか知らないが、彼女はちゃんとそれをわかっている。わかったうえで、奴といるのさ」
「どうしてそんなことが高貴にわかるの⁈」
「フッ…あんな目で俺に敵意むき出しでいる男の横にいて、気がつかないほうがおかしい。険悪になる前にお前の名前を出して終わらせようとしたのが、わからなかったのか?」
……
わからなかったわよ。