嘘から始まる恋だった
そこまでする優香の気持ちを考えると複雑だった。
義兄が私に向ける思いに気づいてる…
私はこれからどうしたらいいの?
「気にするな………お前は、俺だけを見ていろ…………それでいい」
足を止め、私を抱きしめる高貴。
甘く囁く声に誘われて男を見つめる。
視線を絡ませ、しばらくの沈黙の後…
男の顔が近づいてきたと思ったら、唇をかすめる高貴の唇。
えっ…
いまのって…キス?
だよね⁈
突然のことにドキドキする心臓。
それなのに…キスしてきた本人は表情一つ変えない。
この男にとって、今のはキスに入らないらしい。
私だけがドキドキしていることが悔しくて、私は平静を装うことにした。
どうしてドキドキするの?
どうして悔しいの?
自分に問いかけるも、答えは出てこなかった。
ーーーーーー
駅裏にある高貴のマンションから車に乗り、私のアパートまで車を走らせる男の横で1人、考えを巡らせている私。
ほんの数日前まで、会話することもなかった雲の上のような男とこれから共同生活をしなければならない。
いくら周りを欺く為とはいえ…恋人でもない他人同士が一つ屋根の下で暮らすことに抵抗がない訳じゃない。
義兄のように豹変するかもしれないのに、私を守ると言ってくれる高貴を信じたいと思う自分がいる。
彼がそこまでしてくれるのはどうしてなのだろう?
迷惑ではないだろうか?
ロビーで見た、義兄が高貴を見る鋭い視線。
このまま、義兄と私の問題に巻き込んでいいのだろうか?
今なら、まだなかったことにできる。
義兄が高貴に何かしないと言い切れない不安。
彼に何かあれば…巻き込んだことに私は一生後悔する。
「……着いたぞ」
「あっ…ありがとう。あの…ね、…」
「ほら、さっさと荷物まとめてどこかで飯でも食べて帰ろう」
さっさと車から降りてしまう男。
「……」
仕方なく車から降りて男の後を追いかけると、すでにアパートの部屋の前で待機して私が来るのを待っている。
どうしよう?
タイミングを逃してしまった。
鞄から部屋の鍵を取り出して、躊躇っている手から鍵を奪い、男がさっさと開けて自分の家のように勝手に入っていくから追いかけて中に入っていく私。
「……ちょっと、勝手に入って行かないでよ」
「余計なこと考えてモタモタしているからだろう⁈」
「余計なことって…ただ、やっぱり、迷惑かけれないよ。だから…」