嘘から始まる恋だった
振り向いた男によって、腕の中に囚われる。
「……迷惑だなんて思ってない。お前の側にいたいんだ…」
顔を上げ、高貴の表情を伺う。
「毎日、お前が無事か心配で眠れない……寝不足で仕事に影響する方こそが迷惑かけるってわかれよ。それに何かあったら直ぐに駆けつけれない。俺を安心させる為にも一緒に住んでくれ…」
私の頬に手を添え…
語りかける言葉はまるで本当の恋人のように…切なく……
迷惑をかけることを心配する私の為に
甘く、優しい嘘で包んでくれる。
だから…あがらうことを諦めた。
高貴がそう言ってくれるなら…あまえてみよう。
「迷惑かけてごめんね」
クスッと笑う男が私の鼻をつまむ。
「まったく、何度言えばわかる?迷惑じゃないって言ってるだろう⁈……謝るならさっきの『お前の側にいたい』って言ったセリフをスルーしたことを謝ってくれよ」
本気なのか冗談なのかわからない笑顔で苦笑している男。
私の気持ちを和らげる為に言ってくれてるのだろうと思うと胸の奥がチクンとした。
不釣り合いな私…が、高貴に惹かれはじめている。
こうして抱きしめられているだけで…ドキドキするし、男の一言一言に左右される感情。
だけど、これ以上よく深くなってはいけない。
…高貴の優しさに応える為にも、彼が望む彼女を演じきってみせると誓いながら
「……スルーしてないよ。私の側にいたいんでしょう?だから…こうして抱きしめられてあげてるじゃない⁈」
……口角を上げ微笑む男。
「えらく上から目線だなぁ…その言葉忘れるなよ」
私のおでこを小突き離れていく男の背を見つめ、無意識に小突かれたおでこを触っていた。
「……荷物を詰めて来い。俺も手伝ってやろうか?」
……
男が、タンスの引き出しに手をかけようとする。
そこには…下着がしまってある。
「……やっ、そこはダメ」
慌てて引き出しを押さえた。
クッククク……
笑い声をこらえ、私の頭をポンと撫でて
ソファに座る高貴。
「晩ご飯がコンビニ弁当になる前に早くしろよ」
わざとらしく、腕時計を見せる男。
ファミレスだって、ラーメン店だって牛丼店だって遅くまでやってるのに…どうしてコンビニ弁当なのよ。
ブツブツと独り言が聞こえていたのか男が…
「麗奈…口より手を動かせよ」
楽しそうに笑い、荷造りをしている私を見ている。