嘘から始まる恋だった
キャリーバックに持ってきた物を詰めただけだから、すぐに荷造りは終了。
「お待たせ…あっ…お鍋」
キッチンに高貴が買ってくれたお鍋とお茶碗などを取りにいく。
「そんな物、置いてけよ」
「ダメだよ。高貴が買ってくれたはじめての物なのに…」
「……そう言ってくれてるのは嬉しいが、はじめて彼女に買う物じゃないからな…」
彼女?
嬉しい響きに頬が熱くなりながらも
「本当の彼女にあげるはじめてがお鍋じゃ、ヒキますよ。でも、私達は…同志でしょう⁈このお鍋で絆が深まったんだから…大事にしたい」
「……絆か。まぁ、それはプレゼントじゃないしカウントしない。同棲する前にに揃えたってことで、持っていくのもありだな」
「同居だから…」
私の手からお鍋を持ち、リビングに出したキャリーバックも持って玄関に向かった男は聞こえなかったように私の声を無視する。
顎で行くぞと催促され、電気を消して鍵をガチャリと閉めた。
ーーーーーー
「晩ご飯、何が食べたい?」
暗くなるにつれ気温が下がり、今の外気温は5℃
「……ラーメンがいい」
「そんな物でいいのか?」
「うん…寒いし…」
「……なら…駅裏に美味しいラーメン屋があるんだ。そこでいいか?」
「うん」
クスッと笑う高貴
「晩ご飯がラーメンがいいって言う女、お前がはじめてだわ…」
何気なく言ったのだろうけど…他の女性の影が見えて傷ついている私。
身長があり
誰もがときめくいい男
大和一族
そして…社長候補の筆頭
これだけの条件のいい28歳の健全な男に彼女がいなかったなんてあるはずがない。
見えない彼女達に嫉妬している私は…
「どんな女と付き合ってたのよ。晩ご飯にラーメンを選ぶ女で悪かったわね」
「……突然、どうしたんだ?俺は着飾らないお前が好きだって言いたかっただけだ」
運転する男が、車を止め助手席の私を見つめる。
私の頭の中をグルグル回る高貴の言葉。
『お前が好きだ』
深い意味なんてないはずなのに…舞い上がってしまう。
私…も好き
惹かれているだけだと言い聞かせたけど…気づいてしまった。
嫉妬するのも…
ドキドキするのも…
高貴の言葉に一喜一憂するのも…
好きだからなんだ。
だけど、この気持ちに蓋をしなければならない。
だって私は、高貴にふさわしくないもの