嘘から始まる恋だった
経済誌を見て心配して駆けつけてくれた優香。
「麗奈、大丈夫?」
「なにが?」
「えっと…」
「大丈夫だよ。高貴の婚約間近を知って私が落ち込んでいるって心配してくれたんでしょう⁈」
「……うん…まぁ…」
「私が望んだことだもん…ショックじゃないって言ったら嘘になるけど、高貴は大和建設の社長になりたかったのよ。お爺様に逆らったらその夢が閉ざされてしまうの。これでいいんだよ……私には高貴の子供がいるもの。幸せよ」
「嘘ばっかり…」
「嘘じゃないって…」
「それじゃあ、どうしてそんな悲しい顔しているの?」
私の横にきて顔を覗き込む優香。
「高貴さんにあなたの子供がいるからそばにいてって言えばいいじゃない」
「高貴の足手纏いになりたくない」
「どうして…足手纏いなの?高貴さん、そんなこと言う人なの?」
「違うよ。そうじゃないから、だから私……高貴から離れたんだもの」
「馬鹿ね…高貴さんね、麗奈がいなくなった次の日、私にね……麗奈を頼むって、必ず、迎えに行くからって私に真剣な表情をして言ってたのよ」
私は、口から溢れ出そうな嗚咽を口を押さえて耐えた。
声を殺しても震える体は止められない。
優香がぎゅっと抱きしめてくれて頭上から囁く声。
「叔父様が会社を辞められて空いた専務のポストについて、遅くまで仕事しているらしいわ。会社で見る高貴さんはやつれて元気がないけど…受付にいる私に『もう少しだから…』って今日もつぶやいて言ったのよ。高貴さん、麗奈の為に頑張っていると思うの」
「……」
「きっと、私から麗奈に伝えてほしかったんだと思ったの。最初は、高貴さんのこと憎かったし信用できなかったから麗奈にも言わなかったけど、あんな必死になって言われたら信じてあげるしかないかなって……今まで言わなくてごめんね」
「……ううん。優香は私の為を思って言わなかったんでしょう⁈」
「そうだけど…ごめんなさい」
「ありがとう…それを聞けただけで嬉しい。高貴が別の人と結婚することになっても私の為に頑張ってくれたってわかったから……それだけでいいの」
「もう、どうしてそう言うこと言うの。結婚間近なんて本当かどうかわからないでしょう?……そういえば…来月、創立記念パーティーがあるわ。もしかして…そんなはず…でも……」
最後は独り言のようにつぶやきだした優香だった。