嘘から始まる恋だった
ちらっと私の顔色を伺ってごまかすように笑う。
「なんなの?」
苛立ち気に優香を睨む。
「なんでもないよ……また、高貴さんの情報教えるね」
じゃあとそそくさと退散していく優香を疑問にも思わずに見送った。
その日から数日経ったある日
産婦人科病院の帰りにたまたま立ち寄ったコンビニ。
少し膨らんできたかなって思うお腹を撫でて雑誌を買おうとしたら、経済誌の見出しに大和建設御曹司…婚約とデカデカと…
お相手は、建設大臣のお嬢様か⁈
見なければよかった…
コンビニなんて寄らなければよかった…
雑誌を買おうと思わなければよかった…
わかっていたことなのに、こうして突きつけられると頭が真っ白になってしまう。
そんな私に気づいた母が私の肩を抱き寄せてコンビニを後にした。
何も言わず
ただ…背中を撫でてくれる。
この時ほど、本当に1人じゃなくてよかったと思える瞬間だった。
自分で選んだ道だけど…
愛する人が別の人を選ぶのは思っていた以上にやはり悲しいもので、1人だったら耐えきれなくてどうなっていたのだろう?
「……ありがとう、お母さん」
背中を撫でてくれる母に精一杯の感謝だった。
高貴が私の為にあらがいでくれた。
だけど、所詮会長の命令に逆らえないのが現状なのだろう。
大和建設のトップに立ちたいなら、高貴には大きな後ろ盾が必要だもの。
建設大臣のお嬢様なら大きな後ろ盾になり会長の思惑通り、高貴が次期社長に決まったも同然の結婚相手なのだ。
高貴の夢が叶うのは嬉しいはずなのに、
私の心は今にも壊れそうで胸が苦しい。
どうして…
高貴の横にいるのは私のはずなのに、高貴の横で幸せそうに微笑んでいるのは別の女なのだろう?
こうき…
私のことなんて
もう忘れた?
どうして会いに来てくれないの?
愛してるって言ってくれた言葉は嘘だったの?
れいなって呼んでよ。
私以外の人をその手に抱かないでよ。
自分勝手な思いに押しつぶされそうだ。
雑誌に婚約発表されたぐらいでこんなに心が乱れるなんて…
これが結婚発表になったら?
幸せそうに微笑んでいる2人を見てしまったら?
一体私はどうなるの?
この子が、どんどん大きくなってもしも高貴に似てきてら?
やはり、高貴を思い出して心が壊れてしまう。
どうにもならない思いに涙が溢れて、コントロールできない感情に振り回されている。