そのキスで教えてほしい
目の前の彼は何ともない感じで私を見つめ返してくる。

その穏やかさにハラハラした。
もうだめだ。こうしていちいち狼狽えるなら、いっそのこと自分から話をしてみたほうがいいのかもしれない。
どうする、私。ああもう、言ってしまおう。

「あの、」

「うん?」

「昨日のことなんですけど。崎坂さんが会社の前で女の人と……あの……」

「ああ、あれね、付き合って欲しいってことを言いに会社の前まで来てたらしくて、俺もばったり出会して驚いてた」

「別れ話じゃなかったんですか……?」

「うん」

「なんか付き合ってたのかな、なんて思ってたんです。き、キスもしてたし……」

あまりにも崎坂さんがすらすら答えてくれるから、どこまで話をしていいのかわからなくなってしまっていた。

「しつこい人だっから、仕方なく」

困り顔で少しだけ笑みを作った崎坂さんに、私は目を向けて固まっていた。
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