そのキスで教えてほしい
土曜日のお昼。
ギリギリまで洋服に迷って、スキニージーンズに グレーのシンプルなニットを合わせた。

普段の私服。デートという言葉を意識して最初はワンピースを手に取ったりしたけれど、恥ずかしいからやめた。

髪に寝癖はついていないか。化粧は変じゃないか。
全体的におかしい所がないかを確認した後、そわそわしながら部屋のソファーに座っていると、一時前に崎坂さんから『今から迎えに行く』と電話がかかってきた。

すぐにソファーから立ち上がり、鞄を持って戸締りを確認してから部屋を出た。

住んでいるマンションが近いので、私がマンションの外へ出たときにはもう、崎坂さんの車が目の前に停まったところだった。

大きく鳴り出した鼓動を意識しないように車へ歩いて向かう。

たどり着いて助手席のドアを掴んで引くと、私服の崎坂さんと目があった。

「鈴沢」

挨拶の変わりに私を呼んで微笑んだ崎坂さんは、紺のジャケットを着ていた。

「こ、こんにちは。失礼します」

私は視線をそらすと、ぎこちない動作で助手席に乗り込んだ。
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