ネクタイをとられまして
かったと思います。」

男は少し悲しそうな顔をした。

「なるほどな。君もかわいそうだ。しか

し、彼女から離れれば良いのでは?」

ちょび髭が恐らく確信であろうところをつ

く。

「いえ、離れられないのです。以前離れた

ときにはなぜか彼女を、彼女の存在すら知

らなかった私の友人達からよりを戻せとせ

がまれました。しかも、学校ではクラスメ

イトから悪者扱いされ、それはもうひどい

ことになりました……すみません……。」

男はその時の虚しさを思い出したのか目頭

を熱くさせて静かに泣いた。

「では、代わりのネクタイを用意しておく

ことは考えなかったのですか?」

その問いを投げ掛けられた瞬間。男は今ま

で静かに流していた涙が嘘のようにダムが

決壊したがごとくうわんうわんと号泣し

た。

ちょび髭は明らかに動揺したようすですま

ないと声をかけた。

その時だった。かすかに爆発音のような音

が聞こえた。
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