失恋ワケあり両想い(仮)


震える足を何とか奮い立たせ野次馬が群がる方におぼつかない足取りで向かう。


事故の光景を目の当たりにして息を失った。


喉が渇く。


車の破損は酷いものだった。


車体は電柱にぶつかり正面のガラスが割れ破片が道路に散らばる。


道路には車のブレーキ跡と〝誰かの血〟の跡。


血の先をたどって道路を見渡す。


車に飛ばされて横たわる人が数人いた。


その中に、見覚えのある姿。





『あ……』





声が詰まった。


喉の奥で沢山の感情が出たがってそれを阻む。


嗚咽と涙がとまらない。


〝嘘だ〟


と、思いたかった。


そんなはずないと。


彼が待ち合わせに来てしまう。


遅れたこと許さないよ。


たくさんたくさん、謝ってもらうんだからね。
< 5 / 15 >

この作品をシェア

pagetop